銀色の月は太陽の隣で笑う
“これ”と示された瓶に、とりあえずルウンは頷き返す。
ラベルが微妙に明後日の方向を向いていて中身が判別できないが、トーマに使われたら困るものなどこの家にはない。
「ありがとう。これで、凄くいいものを作ってくるよ」
先ほど苦労して朝ご飯を食べたばかりなのに、と思ったら、自然とルウンの顔が嫌そうに歪んだ。それを見て、トーマは苦笑する。
「大丈夫。飲み物だから、食欲がなくてもいけると思うよ」
今はお腹がいっぱいなので飲み物だって欲しくはなかったが、ひとまずルウンは頷いて見せる。
それを確認して寝室を出ていこうとしたトーマは、直前で思い出したように振り返った。
「しばらくキッチンにいるけど、その前に何かしてほしいことはある?」
考えるように少しの間を空けてから、ルウンは首を横に振った。
「何かあったら、遠慮なく呼んでね」
今度はコクりと頷いたルウンを寝室に残して、トーマはキッチンへ向かう。
調理台にぶどう酒の瓶を置いてから腕まくりすると、よしっ!と気合をいれがてら顔を上げる。