銀色の月は太陽の隣で笑う

調理台の上には作り付けの棚があって、茶葉やスパイス、調味料などが並んでいた。

綺麗なその並びをなるべく崩さないように気をつけながら、トーマは指先で瓶をかき分ける。


「えっと……ブラックペッパーにローリエ、あとは……クローブか」


パッと見では何が入っているのか分からないような瓶は静かに避けて、目当てのものを見つけ出しては次々と調理台に並べていく。


「シナモン……は、これかな。あと、ショウガに……そうだ!オレンジ」


オレンジがスパイス類に紛れているわけもないので、トーマはキッチンをあちこち探し回る。


「地下にあったかな……」


先ほど見に行ったばかりの地下の光景を思い起こしてみるが、加工品は数多く置いてあっても、フレッシュな果物を見た覚えはない。

ルウンに聞きに行こうかと思ったところで、トーマの目にあるものが止まった。


「……オレンジがなかったらレモンでもいいって、あの人確か言っていたな」


トーマは吸い寄せられるように近づいて、目に止まった瓶を掴み上げる。
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