銀色の月は太陽の隣で笑う

慌ててトーマが抱きとめると、ルウンの座っていた椅子が、大きな音を立てて床に転がる。


「とうまぁー」

「ル、ルン……!?」


甘えたような声で名前を呼んで、えへへと可愛らしく笑ったルウンが、トーマの胸に顔を擦り付ける。

トーマは目を白黒させてルウンが転げ落ちないように支えるばかりで、中々状況に頭がついていかない。

柔らかくて、温かくて、小さなものが、自分の腕の中にいる。

強く抱きしめたら壊れてしまいそうで、でも抱きしめる手を離してしまったらその小さな体が床に落ちてしまうから、戸惑いながらも、トーマはふんわりと包み込むようにその体に腕を回す。


「とうま……」


ルウンは幸せそうにふにゃりと笑って、歌うようにトーマの名を口ずさむ。

名前を呼ばれるたびに、胸元に顔を押し付けられるたびに、トーマの心臓がドクンと強く脈打った。

顔を上げたルウンと目が合って、赤みが増したその頬に、潤んだ瞳に、またトーマの心臓が音を立てる。


「ル、ルン……ちょっと、離れようか」
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