銀色の月は太陽の隣で笑う
自分でもきっと、何を言っているのかよく分かっていない。そんな熱に浮かされたような言葉だったけれど、“寂しい”と繰り返すルウンの声は、確かにトーマに届いた。
それは、ルウンが今まで我慢して、押さえ込んで、気づかないようにしてきた気持ちが、涙と一緒に溢れ出した瞬間。
「ルン……」
こみ上げてきた愛おしさが零れ落ちるように、トーマはそっと名前を呼んだ。
「ごめんね……」
力を入れすぎないように細心の注意を払いながら、一度は引き離そうとしたその小さな体を、もう一度ギュッと抱きしめる。また、ルウンが鼻を啜り上げる音が聞こえた。
「大丈夫だよ。大丈夫、大丈夫だから。だってほら、僕がここにいるでしょ。今はもう、一人じゃないよ」
抱きつくルウンの腕に、きゅっと力がこもる。まるで、トーマの存在を確かめるように。
子供をあやすように優しく背中をさすっていると、やがて泣き声が小さくなり、ルウンの体からふっと力が抜けた。
代わりにトーマの腕には、ずっしりとした重みが伝わってくる。
落とさないよう横抱きにして膝に乗せ、トーマはふうと息を吐く。