銀色の月は太陽の隣で笑う

ちょんっと触ってはすぐに手を引いて、幾度か繰り返してみてもトーマが目を覚まさない事を確認すると、今度は髪の間に指を差し入れた。そのまま、梳くようにしてトーマの髪を撫でる。

全体的に黒いトーマの髪だが、光の加減によって所々茶色くも見える。その不思議な色の変わり具合に目を奪われて、ルウンは何度も何度も髪を梳いた。

しばらくそうして髪の毛で遊んでいると、くぐもった呻き声のようなものが耳に届く。

ビックリして手を止めると、突然トーマがむっくりと顔を上げた。


「ぼくはなにものにもしばられない!じゆうなたびびとなんだぁあー」


両手を大きく天井に向かって伸ばしながら、トーマが声高に宣言する。

突然の事にあっけにとられ、呆然とその様子を見つめていたルウンは、ハッと気がついた。


「……トウマ?」


トーマの瞳は未だぴったりと閉じたままで、ルウンが名前を呼んでも視線は合わない。


「ぼくはたびにでる!じゆうのたびだあぁあ」


ぐわああ、と妙な雄叫びをあげたかと思ったら、次の瞬間トーマの頭がぽてっと再びベッドの端に落ちる。
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