銀色の月は太陽の隣で笑う

しばらくしても動き出さないトーマに、恐る恐る顔を覗き込んでみると、くかーくかーと寝息が聞こえた。

ルウンは堪らずクスリと笑みを零して、そのまま声を抑えてしばらく笑い続ける。

部屋の中に響くのは、クスクスと精一杯抑えた笑い声と、トーマの安らかな寝息。

窓の向こうはどんよりとした曇り空、けれどもその雲の隙間を縫うようにして、久しぶりの陽光が差していた。そのうちの一筋が窓のすぐ側にも差し込んで、部屋の中にも光が零れてくる。

温かい光、でもなぜだか、その光を見ていると落ち着かない気持ちになった。

光の位置を変えるように雲が動くと、フツっと部屋に零れていた光も消える。それが、なぜだかとても安心した。


――まだ、あんなに雲がある。だからまだ、雨は降り止まない。


あんなに憂鬱だったはずの雨季が、早く明けろと願うばかりだった日々が、今は正反対の気持ちをルウンにもたらす。

このままずっと雨が止まなければいいなんて、そんな風に思ってしまうのは何故なのか。ルウンの中で、名前の分からない気持ちがどんどん大きく育っていく。



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