銀色の月は太陽の隣で笑う
1 出会いのハチミツ飴
賑やかな街の喧騒から離れ、のどかな町や村も通り過ぎてしばらくすると、やがて鬱蒼と木々が生い茂る森が見えてくる。
枝葉の隙間からしか日のささないその森は、昼間でもどこか薄暗い。
そんな森の奥深く、人気のない場所にポツンと、レンガ造りの洋館が佇んでいた。
造られた当初は大層立派であったろう外観は、今では蔦が絡まり放題で、レンガも所々ひび割れて崩れかけている。
館の周りだけポッカリと木々が開けているため、薄暗い森とは違って、そこからは青い空がよく見えた。
柔らかく降り注ぐ午後の日差しに照らされた屋根に向かって、森の方から賑やかに鳴き交わしながら鳥が数羽飛んでくる。
屋根の上で仲良くじゃれ合うその声を聞きつけたかのように、館の扉がゆっくりと開いた。
お盆に乗せた一人分のティーセットと、腕に引っ掛けたバスケットにはパン。
それを持って現れたのは、美しい白銀の髪の少女。
少女は青みがかった銀色の瞳で、屋根の上で鳴き交わす鳥達を眺める。