銀色の月は太陽の隣で笑う
食器を手にキッチンへ向かうトーマの背中を見つめながら、ルウンはそっと胸に手を当てた。
またそこが、ツキツキと痛み出す。
視線が合わない、会話もない、それに加えて今日はまだ一度も“ルン”と呼んでもらっていない。それが辛くて、胸が痛くて苦しくて堪らなかった。
食器を洗う音をぼんやりと聞きながら、ルウンはもそもそとパンを口に運ぶ。
今日の食事は、どこか味気ない。
スープで半ば流し込むようにして食事を平らげ、ルウンも食器を重ねて席を立つ。
後ろから近づいてみると、トーマはまたぼんやりと手元に視線を落としていた。
手は動いている、だから食器は確かに洗われていくけれど、そこに心はない。
どこか抜け殻のような気配を漂わせるトーマに、ルウンの不安は募っていく。そのまま、どこか遠い場所に行ってしまうような、そんな気がして。
ああでも、彼は旅人だから。いつかは行ってしまうのか……どこか、遠い場所へ――ルウンもまたぼんやりとトーマの背中を見つめていたら、水音が止んで振り返る気配がした。
「おわっ!?」