銀色の月は太陽の隣で笑う
トーマの様子を見ていれば、楽しい話でないことはなんとなくでも想像できる。それなのにぎこちなくも笑顔を浮かべるところが、また更にルウンの不安を煽った。
「話っていうのはね」
そこで一旦言葉を途切れさせたトーマは、話し始めてなおどこか迷うように視線を泳がせる。
テーブルの上から始まり、壁、窓、天井と回って、またテーブルに戻ってきた視線が、ようやく決心したようにルウンへと向けられた。
「……今までたくさんお世話になったお礼と、それから、結局お世話になりっぱなしで何も返せなかったお詫びが言いたくて」
浮かぶのは、またぎこちない笑顔。
その言葉の意味は、みなまで言わずともルウンにだって分かる。分かるからこそ、こみ上げるものを押さえ込むように、ギュッとスカートを握り締めた。
「そろそろ雨季が終わるでしょ。だから僕、行こうかと思っているんだ」
嫌だ――はっきりとした感情が、喉元までこみ上げる。それなのに、声にならないのは何故なのか。
黙り込むルウンに、トーマはぎこちなく笑ったままで続ける。
「短い間だったけど、今まで本当にありがとう」
短いようで、長かった。いややっぱり、長いようで短かったかもしれない。