銀色の月は太陽の隣で笑う

そんなトーマとの日々が、一人ぼっちではない時間が、終わりを告げようとしている。

嫌だ、と言いたかった。できることなら、心の赴くまま、駄々っ子のように喚きたかった。

けれど、旅人は風なのだ。

一つの場所に留まることのない彼等を、引き止めることはできない。

知っている、ちゃんと分かっている。それでも、嫌だと思ってしまうのは止められない。せめぎ合う心が、ルウンから言葉を奪う。

何も言えないまま、ただ真っ直ぐにトーマの瞳を見つめ続ける。

こんなにもしっかりと目が合っているのに、話しかけてもらえているのに、今はそれがちっとも嬉しくない。

胸が痛い。ツキツキ、ツキツキ、痛くて痛くて堪らない。

テーブルの上にあるトーマの手は、ルウンの頭に伸びてくることはないから。その手の温かさが恋しくて――――寂しい。

ああ、そうだ。本当はずっと、一人ぼっちが寂しかった――。

自覚してしまったら、こみ上げてくるものを抑えきれなくなった。あとからあとから、次から次へと、こみ上げたものが頬を伝う。

どうして……。声にならない声が、嗚咽に混じって口から零れ落ちる。

――どうして、雨は止んでしまったのだろう。



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