銀色の月は太陽の隣で笑う
13 残されたサンドイッチ
朝食を作りながら、ふとルウンは考える。あれは一体、なんだったのかと――。
トーマに旅の再開を告げられ、悲しみに泣き疲れてそのまま眠ってしまったルウンは、夜になってから一度目を覚ました。そのあと再び寝室に戻ったルウンの耳に、しばらくして微かな物音が聞こえたのだ。
すでに微睡みの中にあったルウンは、睡魔に負けて確かめに行くことはしなかったが、その音は忍ばせるような足音に似ていた。
「足音……泥棒?」
盗られて困るようなものといえば、地下に貯めている食料くらい。もちろんそれは起きて最初に見に行って、異常がないことを確認している。
そうなるとあとは、可能性としては一つだけ。
ルウンはチラリと屋根裏へ続く階段に視線を送ったが、すぐに逸らしてそれ以上考えるのをやめた。
「……寝ぼけてた。だから、気のせい」
そう、気のせい――そういうことにして、ルウンは作りかけの朝食に意識を戻す。
トーマに贈りたくて、伝えたくて、ずっと探しているものは、今もまだ見つかっていない。