銀色の月は太陽の隣で笑う

外から見れば、トーマが“廃れた”と称するのが分かりすぎるほど、かなり年季が入っているが、中は持ち主である少女の欠かさない掃除のおかげで、中々住みやすい環境が整っていた。

一階が主な生活スペースで、二階の屋根裏部屋は物置、地下には小部屋があって、そこは食料貯蔵用の部屋として使っている。

一階を一通りホウキで掃き終えた少女は、続いてキッチンの棚や調理台、テーブル等を布巾で綺麗に拭いていく。

掃除が終わると今度は、地下に下りて食料の確認。

保存が効くように加工した食材や、元々日持ちのする食材、パンを焼くための粉類などが並んでいるのをぐるりと見渡す。

地下の確認作業が終わって一階に戻ってくると、窓から差し込む陽光がほんのりと部屋を温めてくれていて、ひんやりとした地下の空気で冷えた体からホッと力が抜ける。

一日の主な仕事を終えたところで一息つくと、少女は窓の向こうを見つめた。

少女の視界には、窓枠に切り取られた森の木々と青い空が映っている。

いつもと変わらないはずのその景色が、いつもとは少し違って見えるのが不思議で、少女はしばらく立ち尽くしたまま、ぼんやりとその景色を見つめていた。






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