銀色の月は太陽の隣で笑う
久しぶりの屋根裏はもうすっかりトーマの匂いが染み付いていて、鼻から息を吸い込めば日向の匂いがした。
しかしそこに、トーマの姿はない。
綺麗に整えられたベッドに近づいてシーツに触れれば、ひんやりとした冷たさが手の平に伝わってくる。
ぐるりと部屋を見渡したルウンは、再び階段を駆け下りた。
テーブルの上には朝食が並んでいる、けれどトーマはいない。キッチンも、地下も、寝室も、家中を見て回ったけれど、トーマの姿も彼の荷物もどこにもない。
ハッとして窓の向こうに視線を移し、すぐさま外に飛び出した。
ついこの間まで空を覆っていた灰色の雲が、白い雲に押しのけられるようにして流れていく。
雨は遠のいた。もう間もなく、太陽が最も輝く季節がやって来る。
別れの時は確かに迫っていたけれど、それはこんなにも唐突にやって来るはずではなかった。
畑も鶏小屋も、変わりなくそこにある。けれど、トーマの姿だけがどこにもない。
来た道を駆け戻っていたルウンの耳に、ふと懐かしい鳴き声が届いた。