銀色の月は太陽の隣で笑う
またしばらくぼんやりと窓の向こうを見つめていたルウンは、やがて機械仕掛けの人形のようにぎこちない動きで立ち上がると、そのままフラフラとキッチンへ向かった。
例えトーマがいなくても、当たり前のように時間は過ぎて行く。喉も乾けばお腹も空く。
いつもは心躍るお茶選びを、今日は弾まぬ心で機械的に行う。
なんの気なしに手に取ったのは、トーマと出会った時に淹れたのと同じ、ストロベリーリーフ。あの時は結局、飲めなかったもの。
瓶の蓋を開けると、香るベリーの甘酸っぱさに、その時の記憶が蘇る。
どうしようもなく、会いたいと思った。
美味しいねと笑って欲しい。ルンと呼んで優しく頭を撫でて欲しい。もっと色んなお話を聞かせ欲しい。生まれ育った故郷のことを、今まで旅してきた場所や、そこで出会った人のことを教えて欲しい。
会いたい。どうしようもなく、あなたに会いたい――――。
一旦瓶を調理台に置いて、ルウンは隣の部屋に駆ける。
風圧でふわりと浮いた紙を掴んで、もう一度よく目を凝らした。