銀色の月は太陽の隣で笑う
テーブルの上には手つかずの朝食と、綺麗なままのカップが一人分。
空はすっかり夕焼けに染まっていて、茜色の光が家の中にも差し込んでいる。
ルウンはカップに残っていた冷めたお茶を一息に飲み干すと、ポットを揺らした。
二人分準備したお茶は、全てルウンのお腹に収まって、ポットもすっかり空になっている。
ルウンはポットをテーブルに戻して、ぼんやりと窓の向こうを見つめた。
空が、朱色に染まっている。悲しいほどに綺麗な空。
今度はテーブルの上に視線を落として、トーマが置いていった紙を手に取る。
今日一日で、何度その行為を繰り返したか。何度となく繰り返しても、結局読めないものは読めない。
それでも、不安に押しつぶされそうになるたびに、縋り付くようにその紙に手を伸ばした。
きっとお別れではないと、ここに書いてあるのは“さようなら”ではないのだと信じて。
一人でいることが、こんなにも辛いと感じたのは初めてだった。
一人でいる事が当たり前だった時には分からなかった感情が、どうしようもなくルウンの心を締め付ける。
「トウマ……」