銀色の月は太陽の隣で笑う
「……もう、帰ってこないと、思った」
どれだけ帰りを待ちわびていたか、伝わればいいと願って、上手く言葉にできない代わりにギュッとトーマにしがみつく。
焦ったように名前を呼んでワタワタと慌てた様子だったトーマは、ルウンの言葉に、あれ……?と首を捻る。
「……手紙、置いていったよね。もしかして、見なかった?」
ルウンは思い出したように、握り締め過ぎてくしゃくしゃになった紙を出してトーマに見せる。
「そう、それ。あっ!もしかして……字が汚すぎて読めなかった?ごめんね。これでもいつもより丁寧に書いたつもりだったんだけど」
申し訳なさそうなトーマの言葉を遮るように、ルウンはふるふると首を横に振る。
「……読めない」
それは、トーマが思っているのとは少し意味合いが違う。
問題は字ではなく、ルウンの方にあった。
しばらくしてその言葉の意味に気がついたトーマは、ハッとしたように目を見開く。
「ごめん、ルン……僕」
知らなかった。いや、その可能性に思い至りもしなかった。