銀色の月は太陽の隣で笑う

自分にとっては、読めることも、書けることも、当たり前だったから。


「……ごめんね」


顔を合わせるのが少し気まずかったから、あえて書き置きだけを残して家を出た。それでも、充分だと思って。
けれど、充分ではなかったのだ。

まさかこんな、泣くほど不安にさせていたなんて思いもしなかった。

しがみつくルウンは離れる気配がない。鼓動は、今までで一番高鳴っている。勢いに任せるようにして、トーマはおずおずと手を伸ばした。

そっとルウンの頭に手を置いて、髪の上を滑らせるようにして優しく撫でる。

白銀の髪が、月光に照らされて幻想的に輝いていた。


「買い物にね、行っていたんだ。近くの町まで」


伝えたつもりでいたけれど、結局伝わってはいなかったことを、今度こそ言葉にして伝える。


「言ったよね、そろそろ行こうと思っているって。だから、そのための準備をしに町まで行ってくるって、そう書いたんだよ」


くしゃくしゃの紙に一度視線を落としたルウンは、すぐにまた顔を上げる。
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