銀色の月は太陽の隣で笑う


「朝早く出たのはね、まあ……ちょっと、ルンと顔を合わせづらかったからなんだけど……。なんでかっていうのは、聞かないでくれると嬉しい」


そう言われると気になってしまうけれど、ルウンにとってはトーマが今ここにいる事が何よりも大事だから、顔を合わせづらかった理由なんて、知らなくても一向に構わない。


「いつ、帰ってきた?今?」


ルウンの問いに、トーマは困ったように笑って頬をかく。


「いや、実はもっと前からいたんだ。でも……なんか、入りづらくて」


もっと前といえば、ルウンには一つ思い当たる節がある。

午後のお茶を準備している最中に、ほんの僅かにだけれど、ドアノブが揺れるような音が聞こえた気がしたのだ。
けれど結局、どんなに見つめても誰も入っては来なかった。

だから気のせいだと思っていたのに、もしかしたらあれは、気のせいではなかったのかもしれない。今となっては、どちらでも構わないけれど。

トーマがここにいる。今はそれだけで充分で、それ以外は何もいらない。


「会いたかった」
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