銀色の月は太陽の隣で笑う
言葉は、自然と零れ落ちた。
ああきっと、お話に出て来た少女も、こんな気持ちだったのだ――。
あんなにツキツキと痛かったのが嘘のように、今は胸の中が喜びや嬉しさで満たされている。
「一人ぼっち、はね……寂しいから」
同じだったのだ。一人ぼっちだった魔法使いの元には、優しい少女が訪れたように、ルウンの元には、トーマがやって来た。
日向の匂いがする、旅人が。
別れの時は近くて、それはどうしようもなく辛いことではあるけれど、それでも出会えてよかったと思える。
引き止めはしない。旅人は、決して引き止めてはいけないものだから。
その代わり、その存在を刻み込むように、強く強くしがみつく。
すると、ルウンの顔に影が差し、次の瞬間にはすっぽりとトーマに包み込まれていた。
背中に腕が回されて、柔らかく抱きしめられる。
がむしゃらにしがみつくルウンとは違い、包み込むトーマの腕は、壊れ物を扱うように優しい。
「……困ったな。離れがたくなっちゃうよ」