銀色の月は太陽の隣で笑う

高陽してくる気持ちを抑えてじっくりと目の前の館を眺めながら、トーマはそこに住まう少女のことを思い浮かべる。

肩から零れ落ちる白銀の髪に、驚いたように見開かれた青みがかった銀色の瞳。

月明かりの下で見た少女の姿を思い出すと、またトーマの心が沸き立つ。


「西方には色んなところから人が集まってくるから、時々凄く珍しい容姿の人にも出会えたりするけど……あの色の髪と瞳は初めて見たな」


幾度か国境を超えたこともあるトーマだけれど、未だかつて白銀の髪と青みがかった銀色の瞳とは出会ったことがなかった。

物書きとして、未知との出会いは心が踊る。

トーマは徐ろにバッグを引き寄せると、口を縛ってある紐を緩めて中に手を突っ込み、古びたノートと万年筆を取り出して、そこに一心に何かを書き付けていく。

時折手を止めて顔を上げては、また視線を下ろして手を動かす。

そうして時間が過ぎるのも忘れる程に、トーマはひたすら紙に向かってペンを動かし続けた。





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