銀色の月は太陽の隣で笑う
笑顔のトーマに、お先にどうぞと促され、ルウンは困ったように眉根を寄せた。
「……でも、まだ……見つけてない」
伝えたかった言葉は、胸の内に渦巻くこの感情の名前が、ルウンにはまだ分からない。
「だから、次!次に帰ってくる時までに、見つける」
トーマがいない間、ルウンもまた自分なりに世界を広げてみようと思った。
行商人を待つばかりでなく、自分から町まで買い物に行こう。近隣の村人と交流を持とう。そうやって、まだ知らないことをたくさん知っていけば、いつか分かるはずだから。
トーマに伝えたい、この想いが。きっと簡単なはずの、その言葉が。
「……そっか。それじゃあ、僕が言いたかったことも、その時一緒に言うことにするよ」
不思議そうに首を傾げるルウンに、トーマは照れくさそうに笑った。
「ルンが僕に言いたいこと、見つけてくれるのを待っているから」
そう言ってトーマは、優しくルウンの頭を撫でた。
なぜトーマの言いたいことは今聞けないのか、一緒でなければならないのか、疑問はフツフツと湧き上がっていたけれど、頭を撫でられるのが心地よくて、それも徐々に薄れていく。