銀色の月は太陽の隣で笑う


「ああ、そうだ。せっかく町まで行ったのに、ルンにお土産を買いそびれちゃった。今度帰ってくるときは忘れず買ってくるよ。何がいい?」


“お土産”とは、なんて素敵な響きだろう。

途端に瞳を輝かせたルウンは迷うことなく口を開く。


「本!トウマの、本がいい!」


思いがけない速度での返事とその内容に、トーマは目を見張る。


「……本当にそれでいいの?西方一大きな中心地の街にも行く予定なんだ。だから、もっと素敵なものがいっぱいあるよ」


例えば、アクセサリーだとか洋服だとか、女の子が喜びそうな物は確実に揃っている。

食べ物は流石にお土産にはできないけれど、それ以外ならできるだけルウンの希望に添えるようにするつもりだったのに


「本がいい!トウマの本」


ルウンの答えは変わらなくて、トーマは諦めたように笑って頷いた。


「字、覚える。でも最初は、トウマ読んで」

「えっ!?僕が読むの……?」


自分で書いた物語を自分で読み聞かせるというのは、中々の苦行であるが、ルウンはお構いなしに頷いて見せる。

嬉しそうなその顔を見ていると、とても嫌とは言えなかった。
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