銀色の月は太陽の隣で笑う
エピローグ
からりと晴れ渡った空の下、見送る背中が遠く小さくなっていく。
きっと、何度経験しても慣れることはないだろう胸の痛みを抱えながら、ルウンはトーマの背中を見つめ続ける。
――「行ってきます、ルン」
さようならではない。その言葉には、次へ続く約束が込められている。
だからルウンも、涙をいっぱいに貯めた瞳で、それでも笑って言った。
――「いってらっしゃい、トウマ」
寂しい気持ちを押し込めて口にした、初めてのその言葉。
もう表情は分からないけれど、振り返ったトーマが大きく手を振るのが確かに見えた。
だからルウンも、大きく手を振り返す。
旅人は、行ってしまった。けれどいつか必ず、帰ってくる。
小さく遠くなっていく背中を、ルウンは見えなくなるまで見送り続けた。
日向の香りがする、太陽のようなトーマの笑顔を胸に抱いて。
いつかまた、彼の隣で笑える日を思いながら――。