銀色の月は太陽の隣で笑う
いつもは一人分だけなので二杯で充分なのだが、今日はふと考えて手が止まる。
しばらく迷った末に、少女はもう一杯分スプーンで掬った茶葉を足した。
いつもはカップも一人分しか用意しないのを、今日は二人分。
少しだけいつもとは違う感じが、妙に少女の心を沸き立たせる。
ヤカンがカタカタ鳴り出したところで火を止めると、ポットにそっとお湯を注いでいく。
いつもと同じとぷとぷというその音が、今日はなぜだかいつもより弾んで聞こえた。
シュガーポットやティースプーン、カップと一緒に蓋を閉めたティーポットをお盆に載せると、バスケットに多めのパンを詰めて準備は完成。
窓の向こうから、いつもおやつをねだりにくる鳥達が催促するように鳴いている声が聞こえ、少女はいつもより重たいお盆とバスケットを手に外に出た。
まず慎重にテーブルまで歩いてから、持っていたものを下ろして顔を上げる。
未だトーマは、熱心に手を動かし続けていた。
待ちきれないようにテーブルの上に下りてきた鳥達に先にパンをちぎって与えてから、少女はゆっくりとトーマに近づいていく。