銀色の月は太陽の隣で笑う
「やあ、鳥さん。僕も、仲間に入れさせてもらうね」
呑気に鳥達に挨拶するトーマの声を聞きながら、少女はどうしたものかと考えを巡らせる。
トーマが現れたことに驚いたのか、鳥達はパンの欠片を咥えてバタバタと飛び立っていく。
その行方を目で追いかけていたトーマは、またも困り顔で立ち尽くしている少女に気がついて首を傾げた。
「どうかしたの?」
少女が困ったように見つめる先、一脚しかない椅子を見て、トーマは納得したように頷く。
「大丈夫だよ。僕なら、ここで充分だから」
トーマは、テーブルの脇に何の躊躇もなく腰を下ろす。
「ちょっと高さは違うけど、話をするのに何の問題もないしね。それに、太陽の熱で温まった地面って、ポカポカしていて気持ちいいんだよ」
屈託なく笑うトーマに、少女はまたしばらく考えた末、つけていたエプロンを徐ろに外し始める。
何が始まるのかと驚いているトーマの前で、少女はエプロンを地面に広げると、そこにテーブルから下ろしたお盆とバスケットを置いて、自分も地面にペタンと腰を下ろした。