銀色の月は太陽の隣で笑う
館の周りは上空が開けている為どこも柔らかい日差しに照らされているが、中でも特に日当たりのいい場所に、木製のテーブルと椅子が一脚置いてある。
長く使い込まれ、雨風にも晒されているため、古びて黒ずんでいるが、しっかりとした作りのそのテーブルに、少女は持っていたお盆を下ろした。
そして、バスケットからパンを一つ取ると、それを小さくちぎってテーブルの端にまいていく。
一つ分ちぎり終えて椅子に腰を下ろすと、それを待っていたかのように、鳥達がテーブルの上に舞い降りた。
パンを啄む鳥達を眺めながら、少女はティーポットをゆったりと揺らしてから中身をカップに注ぐ。
とぽとぽと音を立てて注がれる液体は、透き通るような赤い色をしていて、ベリー系の甘酸っぱい香りが立ち上る。
その香りを少女が胸いっぱいに吸い込んだ時、不意に鳥達がパンを啄むのをやめて顔を上げた。
少女もまた、すぐに同じ方向を見やる。