銀色の月は太陽の隣で笑う
確かに、お尻の下に感じる地面は、ポカポカと温かい。
「キミは、椅子を使ってくれて良かったのに」
苦笑するトーマをよそに、少女はティーポットを軽く揺らして、中身をカップに注いでいく。
ふわりと漂った花の香りに、トーマは鼻をヒクつかせた。
「いい香りだね」
コクっと頷いて少女がカップを差し出すと、お礼と共に受け取ったトーマは、フーっと息を吹きかけて早速口を付ける。
「うん、凄く美味しい!」
トーマの顔に笑みが広がるのを見てから、少女は自分のカップにもお茶を注いだ。
その間に「こっちも貰っていいかな?」と、トーマがバスケットに手を伸ばす。
「うん、こっちも旨い!」
旨い、美味しい、と繰り返しながら、お茶を飲んでパンを食べるトーマを眺めながら、少女もカップに口を付ける。
湯気に乗ってバラの香りがふわあっと香って、口の中にほのかに甘い風味が広がった。
「美味しくて、いくらでも食べられちゃうよ」という言葉通り、トーマは次々とパンを平らげていく。