銀色の月は太陽の隣で笑う
多めに持ってきたはずのバスケットの中身が物凄い勢いで減っていくのを見て、少女は慌てて手を伸ばした。
今日持ってきたのは、片手にすっぽりと収まるサイズの丸いパン。
粗めに刻んだ木の実とたっぷりのハチミツが入ったそのパンを、一口サイズにちぎって口に運ぶ。
木の実の食感がザクザクとしていて、ほんのりと甘いパンは、軽めのお昼やおやつなんかに丁度いい。
そこに、先ほどトーマを見て一目散に逃げていった鳥達が、様子を伺うようにして戻ってきた。
少女は、再びパンをちぎってテーブルの端にまく。
「この鳥さん達、昨日来ていたのと同じ子達かな?」
トーマの問いに、少女は曖昧に頷き返す。
同じ種類であることは分かっても、昨日と全く同じ鳥達が来ているかどうかなんて、少女には分かりかねる。
「よく来るの?」
それにはコクリと頷いて、「この時間に、なると……いつも」と補足する。
自分の口に運びながらも、時折鳥達の方へちぎったパンを放っている少女を、トーマはお茶を飲みながら興味深そうに見つめる。
しばらくしてお腹が満たされたのか、鳥達は満足したように鳴いて飛び立っていく。