銀色の月は太陽の隣で笑う
3 眠気覚ましのミントティー
鳥達が屋根の上で鳴き交わす声に、ルウンはパチっと目を開ける。
初めての事がたくさんあって、昨夜は胸がドキドキして中々寝付けなかった為、気がつけばほとんど眠らないままに朝を迎えていた。
”ルン”という新しい響き、久しく感じることのなかった自分以外の温度、二人分のカップと多めにパンを詰めたバスケットに、耳に届く”美味しい”という声。
思い出せばまた胸がドキドキしてくるから、それを何とか押さえ込んで、ルウンはベッドから起き上がった。
いつも通り顔を洗って着替えを済ませると、空のカゴを手にして外に出る。
扉を開けた瞬間差し込んだ朝日に、ルウンは思わず目を細めた。
今日も、空は気持ちよく晴れ渡っている。
洋館の裏に向かって歩き出したルウンは、いつもの場所にその姿を見つけた。
商売道具が入っているという大事なバッグを枕に、トーマは体を丸めて目を閉じている。
足を止めて耳を澄ませば、微かに安らかな寝息が聞こえた。
ルウンは止めていた足を動かして裏に向かうと、畑に水をまいてから鶏小屋に向かい、卵を拾ってカゴに入れ、掃除をして餌をやる。
裏での仕事を終えて来た道を戻ると、眠りこけるトーマをまたチラッと見やってから館に戻った。
ここからは、自分の朝食作り。
スープは昨日作ったものが汁だけまだ残っていたので、そこに千切りにして炒めたキノコとニンジン、ネギ、サヤエンドウを加えて器に盛る。
卵は半熟のスクランブルエッグにして、パンとサラダを添えたら完成。