銀色の月は太陽の隣で笑う
「ああ……今日もいい天気」
ついさっき目が覚めたばかりのトーマは、寝起きのまだぼんやりする頭をバッグに載せたまま、空を見上げていた。
目を凝らせば、青空に溶けてしまいそうな薄らとした月が見える。
その月を何となしに見つめていると、不意にルウンの姿が頭を過ぎった。
月明かりの下で見た、神秘的な美しさを持つ銀色。
午後の日差しの下で見せた、はにかむような笑顔。
口数は少ないが、時折たどたどしく紡がれる言葉。
油断していると、勝手に頭の中を駆け巡ってしまうストーリーを何とか脇に押しやって、トーマは大きく体を伸ばす。
その伸ばした指先がコツンと何かに触れて、トーマは首を反らすようにしてそちらを向いた。
逆さまに見える視界に、靴の先が映る。
起き上がってもう一度、今度は上半身を捻るようにして振り返ってみれば、立ち尽くすルウンと目があった。
「あっ、おはよう」
笑顔で挨拶すれば、「もう、お昼……」と返ってくる。
「僕、朝苦手なんだよね。これでも早い方だよ。天気がいい時なんて、次の日まで起きないこともざらにある」