銀色の月は太陽の隣で笑う
ルウンが不思議そうな顔で首を傾げるので、トーマは説明を補足する。
「僕の生活リズムは、筆の進み具合によって変わるんだ。ノっている時なんかは、寝ないで書く。でないと、後で書けなくなったりすることもあるからね。その代わり、筆がのらない時は、割りと寝ていることが多い」
そこまで言ってトーマは、途端にバツが悪そうな顔で頭をかく。
「でも寝る場所を借りているわけだし、昨日は美味しいお茶も貰ったから……借りっぱなしでなにもしないのは良くないよね」
ぼそぼそと独り言を呟くトーマに、ルウンはキョトンとした顔を向ける。
「これからは、お礼になにか手伝わせて。男手が入り用なこととか、一人じゃ大変なこととか、なにかない?」
トーマからの申し出に、ルウンは驚いたようにふるふると首を横に振る。
このあとにする事といえば、使い終わったティーセットの片付けや、夕食の準備くらいのもの。
わざわざトーマに手伝ってもらうようなことは何もない。
「そっか……。あっ、でも!これからは人手が必要になったら遠慮なく声をかけて」
屈託のない笑顔と言葉に、何と返事をしていいか分からず、ルウンは黙って立ち尽くす。