銀色の月は太陽の隣で笑う
しばらくして、思い出したように後ろを振り返って、それからまたトーマに向き直った。
「お茶の時間……だから」
ポツリと呟かれた言葉に、トーマはルウンが振り返った先を視線で追いかける。
テーブルの横、地面に敷かれた淡い黄色の布の上に、お盆に載ってカップが二つ、それにバスケットが置かれているのが見えた。
「僕の分も、用意してくれたの……?」
ルウンはコクリと頷く。
「なんだか悪いね。突然やってきた身で、昨日に引き続き今日まで、お茶の時間に招待してもらえるなんて」
そう言いながらも嬉しそうに笑って、トーマは立ち上がる。
「でも実を言うと、昨日のお茶が凄く美味しかったから、密かに楽しみにしていたんだ」
おどけたように笑ってみせるトーマに、ルウンも僅かに頬を緩める。
“美味しい”という言葉が、ストンと心の中に落ちてきて、じんわりと中から温もりを放つ。
ほかほかしていて、どこかくすぐったい――でも、全然嫌な感じはしない。
胸を満たす温かさにほんの少しだけ戸惑いながら、ルウンは先に立って歩き出す。
トーマはルウンから少し遅れて、程よい距離を開けてからあとに続いた。
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