銀色の月は太陽の隣で笑う
「眠いの?」と尋ねられてふるふると首を横に振るが、その口からはまた意図せずあくびが零れ落ちる。
「眠いなら無理しなくていいんだよ。なんなら今日はこれでお開きにして、中に戻ってお昼寝したって僕は構わないし」
何となく、この時間を終わらせてしまうのがもったいなくて、ルウンはゆったりと首を横に振るが、あくびに引き寄せられるようにして睡魔がやってくる。
「ルン……?」
徐々にぼんやりとしていく意識の中、トーマが遠慮がちに肩に触れてその体を揺すった。
「寝るなら中に入って、ちゃんとベッドで寝なよ。ルン、聞こえている?」
ゆらゆらと揺れる視界の中、ルウンが僅かに顔を上げてコクリと頷く。
しかし立ち上がるだけの気力もなく、もう一つあくびを落とすと、スーっと重力に引き寄せられるようにして目を閉じた。
「あっ、ちょっとルン……!」
こくりこくりと船を漕ぎ始めたルウンに、トーマが慌てたような声を上げる。
「参ったな……勝手に中に入るわけにはいかないし」
困ったようにすぐそばにある洋館を見上げて、トーマはため息を落とす。
それから、今にも地面に崩れ落ちそうな勢いで揺れているルウンに視線を移し、意を決したように立ち上がった。