銀色の月は太陽の隣で笑う


「ごめんね、ルン」


移動した先はルウンの隣。

肩が触れ合うほどに体を密着させたトーマは、揺れるルウンの頭を、自分の肩へと導く。

コテっと頭が肩に乗って、不安定に揺れていたルウンの体が安定した。


「……やっぱり、ルンは猫かな」


肩にかかる確かな重みと、サラリと零れ落ちる白銀の髪。

青みがかった銀色の瞳は今は閉じられていて、薄く開いた唇からは微かな寝息が漏れ聞こえる。

午後の柔らかい日差しが二人に降り注ぎ、ぽかぽかと温かくお昼寝にはもってこい。

気持ちよさそうに目を閉じるルウンに肩を貸したまま、トーマは空を見上げた。


「起きたらルン、ビックリするかな……。また逃げられて、今度こそ避けられるようになったらどうしよう」


困ったように呟いた言葉は、眠るルウンには届かない。


「ああ……それにしても、いい天気」


薄青い空を、白い雲がゆったりと流れていく。

昨日よりも雲が多くて、青の面積が少ないように感じる空に、トーマはため息ともつかないような息を吐き出した。


「どうか、明日もルンが、僕をお茶に誘ってくれますように……」


祈るように小さく呟いた言葉は、当然のように、眠るルウンには届かない。



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