銀色の月は太陽の隣で笑う
コクリと喉を鳴らして意を決し、ルウンは自分の考えを確かめるようにゆっくりと体を斜めに倒していく。
コツっとトーマの肩に自分の頭が触れた時、つい先ほど、目が覚めた時に見たのと同じ斜めの景色が視界に広がった。
勢いよく体を起こしてトーマから距離を取ると、慌てていた指先がカップを引き倒し、自分でもビックリするほど大きな音を立てた。
その音に、トーマのまぶたが覚醒の兆しをみせて揺れる。
「んん……?」と聞こえた声にルウンは急いで立ち上がると、持ち上げたお盆の上でティーセットが跳ねるのも構わずに、一目散に洋館に向かって駆け出す。
トーマが薄らと目を開けるのと、館の扉が音を立てて閉まるのはほとんど同時だった。
「あれ、僕なにして……――ルン?」
トーマが寝起きでぼんやりする頭を起こして周りを見渡した時、そこには既に自分以外の人影はなく、代わりに置き去りにされた黄色い布が地面に広げられたままになっていた。
「これは……もしかして、嫌な予感的中かな」
忘れられた布を拾って振り返ると、館の扉はピッタリと閉じられていて開く気配はない。
なんだか、建物からも拒絶されているような気がして、トーマは困ったように笑った。