銀色の月は太陽の隣で笑う


「やっぱり、ルンは猫だな」


顔は困っているのに、どこか楽しそうに呟いて立ち上がると、拾い上げた布の土埃を払って椅子の背もたれにかける。


「まだなにも聞けてないのに、出て行けって言われたらどうしよう」


切実さの欠片もない声でのんびりと呟いて、トーマはバッグを手にいつもの定位置にゆったりと戻る。

まだほんのりと温もりが残っているような気がする肩に手を当てて、トーマはふっと頬を緩めた。

自分も眠ってしまうまでのほんのひと時、肩に感じる重みと、隣から聞こえてくる微かな寝息、すぐそばにある安心しきった寝顔は、まるで人見知りの激しい猫が懐いてくれたような、そんな心がほっこりと温まる喜びを感じさせてくれた。


「そういえば……いつだったかお世話になったおばあさんの家にいた猫も、人見知りの激しい子だったな。不用意に近づいて散々引っ掻かれたっけ」


バッグを地面に置いて自分も腰を下ろすと、トーマはいつものようにそこに頭を乗せて横になる。


「元気にしているかな……」


ポツリと呟いてから頭に思い浮かべた顔は、おばあさんでも人見知りの激しい猫でもなく、ルウンの顔であったことに、トーマは小さく笑った。





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