銀色の月は太陽の隣で笑う
その頃洋館の中では、寝室のベッドの上、ルウンが頭からすっぽりと布団を被って丸くなっていた。
未だバクバクと煩い程に鳴り続ける心臓を抑えて、ルウンはギュッと目を瞑る。
目を閉じれば、浮かんでくるのはトーマに寄り添うようにして眠る自分の姿で、今度は堪らず目を開ける。
部屋の中も薄暗いが布団の中はもっと暗くて、目を閉じていてもいなくても、暗がりにトーマの姿が浮かんでくる。
ふるふると頭を激しく横に振ってガバっと身を起こしたルウンは、寝室を出て隣の部屋に向かい、テーブルの上に置きっぱなしにしていたティーセットを洗いにかかった。
ガシガシと一心にカップやティーポットを洗っていると、少しずつ心臓の音も落ち着いてくる。
ルウンは、小さく息を吐いて手を止めた。
あんなに近くに他人を感じたのは初めての事で、思い出せばまた心臓が高鳴り出す。
でも、嫌な感じのドキドキではない。
確かにビックリはしたけれど、それだけ。
窓から外を眺めれば、茜色の空が徐々に紫に染まっていくのが見えた。