銀色の月は太陽の隣で笑う
もうすぐ、夜がやってくる。
ここからは見えるはずもないのに、ルウンは外の景色の中に、自然とトーマの姿を探してしまう。
明日顔を合わせたらすぐにでも、逃げるようにその場からいなくなってしまった事のお詫びと、肩を貸してくれた事へのお礼をしなければと思った。
「……お礼」
ポツリと呟きながら動き出した体は、しかしすぐにピタリと止まる。
果たして、明日もトーマはいつもの場所にいるのだろうか――。
せっかく親切に肩を貸してくれたのに、お礼も言わずに逃げ出した自分に腹を立て、さっさと荷物をまとめて出て行ってしまったりはしていないだろうか――。
考えれば考えるほど不安が胸を覆い尽くして、表情にまでそれが滲み出る。
先ほどとは全く違った意味で、胸がドキドキしてきた。
不安は募るばかりだが、どうしたらいいのかは分からなくて、どうしたいのかも分からない。
答えを求めるように窓の向こうに視線を移すと、外はもう間もなく、夜の帳が降りようとしていた。