銀色の月は太陽の隣で笑う
4 疲れを癒すホットミルク
朝からどんよりと、気分が重くなるほどに空を覆い隠した灰色の雲。
今にも一雨きそうな空模様に、トーマは困り顔で首を捻る。
「うーん……これは、ちょっとまずいな。さて、どうしたものか……」
旅人であるトーマには直感で分かる――これは、確実に降ると。
それも、通り雨や小雨程度の軽いものではない。
今までも旅の途中に何度も雨に降られたことはあったが、その度にトーマは、近くの家で屋根を貸してもらい、雨宿りしてやり過ごしていた。
しかし今回に限っては、昨日の事もあってルウンに屋根を貸してくれるよう頼むのは気が引ける。
「一旦森を抜けて、近くの村か町まで戻るか……」
頭を悩ませながら空を見上げていたトーマの耳に、ふと微かな物音が聞こえた。
振り返ると、昨日トーマが椅子にかけておいた黄色い布を手に、所在無さげに立ち尽くすルウンがいた。
向かい合う二人の間に、しばし沈黙が流れる。
「えっと……」
先に口を開いたのはトーマの方で、その声にルウンも、遠慮がちに靴の先に向けていた視線を上げる。
「おはよう、ルン」
「……おは、よう」
挨拶のあとは、また沈黙。
お互いにお互いの様子を探り合うようなその沈黙に、先に耐えられなくなったのはトーマだった。