銀色の月は太陽の隣で笑う
「ルン、昨日はごめん!」
言い切ってから深々と頭を下げると、自分の声に被るようにして「ごめんなさい!」と声が聞こえた気がした。
そっと顔を上げてみると、ルウンが自分と同じように深々と頭を下げている。
「……ん?」
思わず漏らしてしまった疑問符混じりの声に、ルウンもそっと顔を上げる。
「昨日……肩、貸してくれた。でも、逃げた。……ビックリして。だから、ごめんなさい」
たどたどしく紡がれるセリフを理解したトーマは、なるほどと一つ頷いて、それから笑みを浮かべた。
「僕の方こそ、よく知りもしない人にあんなことされたらビックリしちゃうよね。配慮が足りなかったと思う。本当にごめんね」
ふるふると首を横に振ったルウンが、「それから……」と続けて一旦言葉を切る。
しばらくして、僅かに頬を緩めたルウンは、はにかむようにして笑ってみせた。
「……ありがとう」
ほんの少しだけ頬を染めて照れたように笑うその姿は、神秘的な髪や瞳の色から醸し出される近寄りがたさが抜けて、年相応の可愛らしさだけが覗いていた。
「どういたしまして」
危うく見とれそうになってしまうのを何とか堪えて、トーマも笑顔で返す。
ルウンの頬が、また少し嬉しそうに緩んだ。