銀色の月は太陽の隣で笑う
「うわ……あとちょっと遅かったらずぶ濡れだった」
屋根を叩く雨音を聞きながら、窓を濡らす雨粒を見つめてトーマは呟く。
窓辺に張り付くようにして外を眺めていると、後ろから「準備、できた」とルウンの声が聞こえた。
「……随分と、重装備だね」
振り返った先には、白い布で頭と口元を覆い隠し、箒とチリトリ、バケツに雑巾を携えたルウンが立っている。
「二階、しばらく上がってない。だから掃除も、してない」
「……なるほど」
重装備の訳を理解して、トーマは神妙に頷く。
二階へと続く階段に向かったルウンを、トーマは窓辺から離れて追いかけた。
「持つよ」
ルウンが手にしていた物のうち、より重そうなバケツに横からサッと手を伸ばす。
遠慮する隙も与えずにバケツの運び手を交代したトーマは、何か言いたそうなルウンに、笑顔で先に上るよう促した。
二人で並ぶにはちょっと狭すぎる階段を一列で上りながら、トーマがルウンの背中に問いかける。
「ところでさ、なんで突然二階の掃除?あっいや、男手が必要だから丁度いいってことなら全然構わないんだけど」