銀色の月は太陽の隣で笑う

テーブルの影に隠れるようにしゃがみこんで、少女は再び青みがかった銀色の瞳をそっと覗かせた。

月明かりに浮かび上がる、真剣な青年の横顔。

まだ少し距離はあるものの、先ほどよりはよく見える位置から、少女は目を凝らす。

青年は右手に持った万年筆で、左手に持っているノートに何かを書き付けていた。

紙の上をペン先が走る音を聞きながら、少女はそろりとテーブルの影から這い出して、そのままスカートの裾や手の平が汚れるのも構わず地面に手をついて体制を低くし、ゆっくりと青年の元に近づいていく。

手を伸ばせば触れられるところまで近づいて、少女は後ろから青年の手元を覗き込んだ。


「……?」


少女がそこに見たものは、紙の上をのたくる大量のミミズ……にしか見えないような何か。

最初は本当にミミズだと思ったから、少女はビックリして思わず身を引いたが、よくよく見れば、それは青年が手を動かすたびに紙の上に生み出されていて、どうやら文字のようだった。

滅多に触れる機会のない文字に、少女は興味津々で青年の手元を覗き込む。
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