銀色の月は太陽の隣で笑う

その様子に、ルウンはホッと肩を撫で下ろした。

それでも一応「納屋も牛小屋もない……けど、鶏小屋なら」と声をかけてみると、振り返ったトーマが苦笑する。


「鶏か……それはちょっと遠慮したいかな。鶏も嫌がりそうだしね」


それもそうかと納得して頷くルウンから、再び視線を移してトーマは部屋の観察に戻る。


「これは、全部壊れているものなの?随分と長いことここに置いてあるみたいだけど」

「……壊れてるのも、ある。でも……多分、全部じゃない」


使いすぎて壊れてしまったものもあれば、使う機会に恵まれずに置いたままになっているものもある。

中には、ルウンが住み始める前から置いてある物もあるので、その実態はルウン本人にも把握しきれていなかった。


「壊れても捨てずに取ってあるのは、何か思い入れがあるからなの?」


何気ない問いかけに、ルウンはしばし迷ってから曖昧に首を捻る。

長く使った分だけ愛着は湧いているが、語るほどの思い入れはない。

微妙な表情で答えに困っているルウンに、トーマはそれ以上問い詰めることはなかった。


「壊れているなら、特に慎重に扱わないとだね」


にっこり笑ったトーマは、気合を入れるように、よし!と声を出す。
< 60 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop