銀色の月は太陽の隣で笑う
その様子に、ルウンはホッと肩を撫で下ろした。
それでも一応「納屋も牛小屋もない……けど、鶏小屋なら」と声をかけてみると、振り返ったトーマが苦笑する。
「鶏か……それはちょっと遠慮したいかな。鶏も嫌がりそうだしね」
それもそうかと納得して頷くルウンから、再び視線を移してトーマは部屋の観察に戻る。
「これは、全部壊れているものなの?随分と長いことここに置いてあるみたいだけど」
「……壊れてるのも、ある。でも……多分、全部じゃない」
使いすぎて壊れてしまったものもあれば、使う機会に恵まれずに置いたままになっているものもある。
中には、ルウンが住み始める前から置いてある物もあるので、その実態はルウン本人にも把握しきれていなかった。
「壊れても捨てずに取ってあるのは、何か思い入れがあるからなの?」
何気ない問いかけに、ルウンはしばし迷ってから曖昧に首を捻る。
長く使った分だけ愛着は湧いているが、語るほどの思い入れはない。
微妙な表情で答えに困っているルウンに、トーマはそれ以上問い詰めることはなかった。
「壊れているなら、特に慎重に扱わないとだね」
にっこり笑ったトーマは、気合を入れるように、よし!と声を出す。