銀色の月は太陽の隣で笑う
「じゃあまずは、何をどうすればいい?」
袖をまくりながら問いかけるトーマに、ルウンは表情を改めて、考え込むように部屋の中をぐるりと見渡した。
「……全部、一度下に持って行った方が、掃除しやすい」
トーマが寝る場所だけを掃除するという手もあるが、ルウンとしては、せっかくなら部屋全体を綺麗にして、少しでも過ごしやすい環境に整えたかった。
「分かった。じゃあ、下に運ぶのは僕がやるから、ルンは埃を落としてくれるかな」
箒にしようか雑巾にしようか迷った挙句に、埃の厚さを見て結局箒を手にしたルウンは、手前にあった二段の小さめの棚から順に被っていた埃を床に掃き落としていく。
「はい、終わったらもらうね」
トーマが手にした途端、棚を二段に分けていた中板がガコンと音を立てて外れた。
「……ごめん、ルン。壊しちゃった」
優しく受け取ったつもりだったけれど、優しさが足りなかったのか、それとも力加減を間違えたのか、とにかくトーマは外れてしまった中板からルウンに視線を移す。
ルウンは、申し訳なさそうなトーマに向かって、ふるふると首を横に振った。
「それ、前から壊れてた、から。……だから、大丈夫」