銀色の月は太陽の隣で笑う
「今日は、よく眠れそうだ……」
天井に向かってポツリと呟いたトーマの耳には、未だに屋根を叩く雨音が聞こえている。
昼間に比べて幾分、という事もなく、夜になってもその勢いが弱まることはない。
昼食を終えてから再開した掃除は、トーマの頑張りで何とか全ての物を下ろし終え、食器を片付けたルウンがやってくる頃には、ガランとした部屋のあちこちに分厚い埃が固まっているだけになっていた。
ルウンがせっせと箒で掃き、トーマが雑巾がけをした床に、寝床として設置されたのは、脚の壊れたベッド。
一本だけ壊れてしまっていた脚に合わせて、他の脚も同じ長さに切りそろえたので、だいぶ低くはなったが、野宿が基本のトーマは対して気にもしない。
むしろ、ベッドがあるだけで大変喜ばしい程だった。
想像以上に上等な寝床に、枕替わりはいつものバッグ。
ぼんやりと天井を見上げた姿勢で、トーマは明日のことを考えていた。
明日は、一階に下ろしたものを再び二階に上げるという作業が残っている。
けれどルウンは、この機会に壊れている中で木製のものは、解体して冬用の薪にすると言っていた。
となれば、二階に上げるものはきっとそう多くはない。
明日の工程を一通り確認したところで、トーマは天井から窓へと視線を移す。
月も雨雲に隠れてしまっているこんな日は、明かりを落としてしまえば、一気に部屋の中が暗闇に包まれる。