銀色の月は太陽の隣で笑う
同じ頃ルウンは、パッチリ開いた目で天井を見つめて、屋根を打つ雨の音を聞くともなしに聞いていた。
今日はいつもと違い、同じ屋根の下にトーマがいると思うと、心が妙にざわざわする。
それは嫌な感じではないのだが、妙に緊張するというか、ドキドキするというか、何とも言えない初めての感覚に、要は戸惑っていた。
雨が多くなるこの時期は、ルウンにとって憂鬱でしかなかったのが、今回はまるで違う。
まだトーマと出会って日は浅いが、誰かにご飯を作ってあげる喜びを知り、誰かとお喋りをする楽しさを知り、誰かと一緒にいることの温かさを知った。
今までずっと一人きりで、それが当たり前で、何の疑問も感情も抱かなかったルウンにとって、ここ数日で知ったたくさんの“初めて”は、全てが心躍るものだった。
パッチリと開いた目を何とか閉じて眠ろうと試みるが、眠気は一向にやってこない。
体の向きを変えてみたり、頭から布団を被ってみたりするが、やはり眠気は遠い。
布団の端に手を添えて、そこからちょこんと目だけを出して天井を眺めていると、不意に昼間の光景が蘇った。
――「美味しいよ」
少し焦がしてしまったお昼ご飯を、そう言って笑顔で平らげてくれたトーマの姿が頭に浮かぶ。
楽しかった午後の記憶に浸るように、ルウンはそっと目を閉じる。
眠気は依然として遠いが、今日は何だか素敵な夢が見られそうな――そんな予感がしていた。