It's so hopeless
「ソラはこの箱庭の噂、聞いたことあるだろう?」
ロイのその一言から話は始まった。
噂…。
悪い噂ばかりだ。
私は頷きそうになり、気付いた。ロイは目が見えない。
「うん…。でも残念だけどいい噂ではないよ」
私は悲しくなり、顔を歪めた。
ロイに伝わらないのに…。
「そうだよね…。
確かにソラ以外、誰も来ないもんね。妙に納得」
ロイは力なく笑った。
語彙の乏しい私は、何て声をかけるべきかわからずにいた。
そんなことをしている内にロイは本題へと入っていった。
「僕はね、物心ついた頃には既に此処にいたんだ。
包帯だって最初からこうだった。
あの頃はひどかったさ…。僕は両手両足を鎖で拘束されていた。
僕はそれが嫌で嫌で、無理矢理鎖を外したんだ」
ロイは鳥籠の隅に無造作に存在していた鎖を指差す。
乾いた血が付着している。すっかり錆びてぼろぼろだった。
私は生唾を飲み込んだ。
ロイの境遇は私が想像していたよりも、過酷で暗いものだった。
考えれば涙が零れてきそうだ。
ロイがどんな思いで生きてきたのか……。