It's so hopeless
鳥籠…。
閉ざされた“彼”だけの世界。
幾重にも錠が掛けられ、厳重すぎる籠の扉。
その中で彼は蹲るように座っていた。
白い髪は無造作に跳ねている。
華奢な感じの少年で、身体の至る所に巻かれた包帯が痛々しい。
顔上半分を覆う包帯で、彼の瞳は隠されていた。
彼の生きる世界に光はない。包帯が光を遮ってしまうから…。
私は恐る恐る鳥籠に歩み寄る。
この庭に来て、初めて出会った人だ。
話かけてみよう…。
「――こんにちは」
勇気を出して私が声をかけると、籠の少年はびくっと肩を竦めた。
少しの沈黙の後。
「誰―――?」
少年は脅えるような声で囁くように言った。
あの歌声と同じで、少し擦れた声だった。
私は嬉しくなり、鳥籠の前まで走った。
間近で見る鳥籠は大きかった。
「私はソラ。あなたの名前は何?」
私が自己紹介をすると、少年は何回か私の名を呟いて繰り返した。
「ソラ――。
僕はロイ」
少年ロイはまだ私に脅えているのか、鳥籠の中央に座っていた。
「もっとこっちに来なよ。いろいろ話しよう?」
私の言葉に、ロイはびくびくしつつも寄ってきてくれた。
立ち上がったロイは華奢なわりに背が高かった。
くすんだ白のワイシャツは着崩れしている。
黒いズボンはロイの長い足によく似合っていた。