It's so hopeless
何の話をしようか…。
考えていた私はふと手元のクッキーに目をやった。
「そうだっ。クッキー食べる?
私が作ったんだけど…」
私が袋を開けると、辺りに甘いクッキーの香りが広がる。
ロイはおもむろに首を傾げた。
「―――クッキーって何?」
ロイはクッキーを知らなかったようだ。
クッキーを知らない人なんて普通いるのか…。
この時正直、私は呆気に取られた。
説明のしようがないな…。
私はロイの空を彷徨っていた手に、クッキーを一つそっと握らせた。
「食べてみるのが一番早い。これがクッキーだよ」
私が促すと、ロイはゆっくりと自らの口にクッキーを運んだ。
ゆっくりゆっくり、確かめるように味わっている。
私も思わず見入ってしまう程、ロイの口元は綺麗。
ドキドキしながら私はロイに、美味しいか尋ねた。
「―うん。好き」
ロイの口元が明るく歪んだ。弧を描くように。
笑っている。
綺麗な笑みだった。
これで私に心を開いたロイは、多くの質問をしてきた。
「――外の世界はどんな所?」
その問は数あるロイの質問の中でも特に印象的だった。
その時、私ははじめてロイの思いを知った。