It's so hopeless




何の話をしようか…。
考えていた私はふと手元のクッキーに目をやった。





「そうだっ。クッキー食べる?

私が作ったんだけど…」




私が袋を開けると、辺りに甘いクッキーの香りが広がる。




ロイはおもむろに首を傾げた。




「―――クッキーって何?」




ロイはクッキーを知らなかったようだ。



クッキーを知らない人なんて普通いるのか…。
この時正直、私は呆気に取られた。




説明のしようがないな…。

私はロイの空を彷徨っていた手に、クッキーを一つそっと握らせた。



「食べてみるのが一番早い。これがクッキーだよ」




私が促すと、ロイはゆっくりと自らの口にクッキーを運んだ。



ゆっくりゆっくり、確かめるように味わっている。


私も思わず見入ってしまう程、ロイの口元は綺麗。





ドキドキしながら私はロイに、美味しいか尋ねた。





「―うん。好き」




ロイの口元が明るく歪んだ。弧を描くように。


笑っている。
綺麗な笑みだった。






これで私に心を開いたロイは、多くの質問をしてきた。





「――外の世界はどんな所?」





その問は数あるロイの質問の中でも特に印象的だった。






その時、私ははじめてロイの思いを知った。
< 26 / 77 >

この作品をシェア

pagetop