It's so hopeless
「なんかさー。毎日やって来る煩いちびっこ達が今日に限って来ないんだよね。
いじめだよなー。
俺の誕生日だと知ってて来ないなんてさ」
階段を登りながらぶつぶつと愚痴を溢すゼロ。
悪態をついているがその顔はどこか楽しそうだった。
ゼロは変人な上、お人好しだったりするので、ちびっこになめられる性分。
どんなに貶されても、悪戯されても決して力を奮わない。
たまに反撃として拳骨を食らわせることもあるが、基本は笑って許している。
「ちびっこに好かれてるんだよ、ゼロ。
嫌いだったらちょっかいなんか出さないでしょ?」
私が笑って言うと、ゼロは複雑そうに“そうなんかな…”と呟いた。
「はい、二階に到着。
散らかってるけどあんまり気にしないでくれ」
木でできた扉。
ゼロが近づくと、音もたてずにひとりでに開いた。
「どうぞ」
紳士的に私を部屋へ招き入れるゼロは少し様になっていた。
服装と容姿は確かに紳士のようだ。
私が部屋に入ったのを確認すると、ゼロは小さく“決まった”と呟いた。
残念ながら丸聞こえである。
「………」
きらきらした瞳で私を見ているゼロを、私は半ば無視。
「なんでノーコメント、ノーリアクションなんだよっ。
少し調子乗っただけです、もうしません…」
ゼロは謙虚だ。
変な奴だ。
だからこそ万人に愛される。
世間一般に言う悪魔のイメージとは大きくかけ離れているせいか、君は本当に悪魔なのかと疑いたくなるほど。